居抜き物件 飲食店の厨房「ドライキッチン・ウェットキッチン」と「グリストラップ」
厨房の床は大きく分けて2種類あることを知っていますか?「ドライキッチン」と言われる水洗いできない床と「ウェットキッチン」と言われる水洗いできる床があります。居抜き物件ではどちらの状態か確認が必要です。また飲食店には「グリストラップ」という排水の油汚れをきれいにしてくれる装置が欠かせません。飲食店厨房の床とグリストラップについて紹介します。
ドライキッチンとは
ドライキッチンは、水を大量に流して洗うことの出来ない床です。排水溝がなく、樹脂でできた長尺シートを敷き詰めて、その上に耐水の塗料を塗って仕上げられています。床には排水口が1つあるくらいで簡単な清掃は可能ですが、水を流して清掃すると下の階に漏水してしまうことがあるので危険です。基本的に乾燥した状態の床なので、雑菌が繁殖することが少なく衛生的に良いとされています。軽食店ならばドライキッチンで十分でしょう。
・ドライキッチンがおすすめの業態=カフェ、バーなど
ウェットキッチンとは
ウェットキッチンは、水を流して心置きなく清掃できる床です。毎日ホースで床に水を流して掃除をするような店舗はウェット仕様になっています。ウェットキッチンは床と床下に防水工事が施されていて、排水用の側溝があります。床は水捌けがいいように側溝へ向かって少し斜めに傾斜がつけられています。側溝の先にはグリストラップという、油と水を分離するための装置があります。厨房の汚れが多くなる飲食店ではウェットキッチンにする必要があります。
・ウェットキッチンがおすすめの業態=洋食屋、中華料理屋など
グリストラップについて
グリストラップは「床に埋め込むタイプ」と「シンク下に置くタイプ」があります。東京都にはすべての飲食店にグリストラップの設置義務があるので、ドライキッチンでも設置することになります。しかし居抜き物件の中には無いまま見逃されている店舗もあります。設置しないと排水管が詰まりやすく、環境にも法的にもよくありませんので、簡易的な置き型のものだけでも設置して営業するようにしましょう。
ドライキッチンをウェットキッチンに変えるには
もともとドライキッチンの床をウェットキッチンに変えるには、工事が必要です。床下は防水層の整備をして階下への水漏れを防ぎます。側溝を作ってグリストラップを設置し、床は傾斜を付けるために削るか床を上げるかしなくてはいけません。工事の費用は厨房の大きさによりますが、100万円前後が相場とされています。工期は1週間ほど見ておきましょう。
保健所の基準はどうなっている?
飲食店の営業を開始するには、必ず事前に各地域の保健所に営業許可申請を行い、基準をクリアしているかチェックを受ける必要があります。スケルトン物件は工事業者が基準を満たすように設計・施工してくれますが、居抜き物件では各自でチェックすることもあります。
東京都保健局の床の共通基準は「タイル、コンクリートなどの耐水性材料で排水がよく、清掃しやすい構造」となっています。床の排水溝や排水施設のことは書かれていないので、排水溝や排水施設はなくても営業できます。
グリストラップの設置については「下水道法」「水質汚濁防止法」「建築基準法」の3つの法令が関わっています。下記、参考のために記載しましたので、ぜひご覧ください。
・下水道法第12条より
下水を継続して排除して公共下水道を使用する者に対し…下水による障害を除去するために必要な施設(以下「除害施設」という。)を設け、又は必要な措置をしなければならない
下水道法:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=333AC0000000079#246
・水質汚濁防止法の概要より
水質汚濁防止法は、排出水を排出する者に対し、排水基準に適合しない排出水の排出を禁 止し、故意・過失を問わず違反者に対して刑罰を科せられることとなっている。
水質汚濁防止法 概要:
http://www.env.go.jp/council/09water/y0912-01/ref03.pdf
まとめ
飲食店の厨房ドライキッチンとウェットキッチンと、グリストラップについて紹介してきました。床の水洗いが必要なければドライキッチン、床を水で洗いたいのならウェットキッチンを選びましょう。保健所の基準ではドライキッチンでもウェットキッチンでも大丈夫ですが、排水に関してはグリストラップで汚れを除く必要があります。軽食店でも手軽な置き型のグリストラップだけでも設置するようにして下さい。