店舗に飾る絵はどこまで許される?ネットからコピーしてもOK?
店舗の壁などに、ネットからお気に入りの画像をコピーして飾りたいというオーナー様が多いようです。
インターネットの普及と印刷機や印刷技術の進歩から、ネットで好みの画像を選び、簡単にアートをつくることができるようになりました。
しかし、問題なく飾れるものと、違法なものがあります。
何が良くて何が問題になるのか…。今回はアートの著作権について解説します。
著作物には必ず著作権がある
絵画や写真などの著作物には必ず著作権があり、著作権法で守られています。したがって、気に入った画像でも、ほとんどのものはコピーすることはできません。
著作権には、「著作者人格権」と「著作権(財産権)」があり、「著作者人格権」とは、著作物に表現された著作者の人格を守るもの。
例えば、著作物を公表する場合はどのような方法で公表すするか、著作物に表示する名前を決める権利、著作物のタイトルや内容を他の人に変えられない権利などです。
「著作権(財産権)」は、著作物の利用方法によって、さまざまな権利を定めたもので、絵画や写真などの場合、著作権者の権利として、複製権・展示権・譲渡権・二次的著作物の利用権などがあります。 画像(著作物)をコピーするだけでも、複製権を侵害する行為に該当します。
著作権は著作者の死後50年まで、原作品のみにある
著作権の保護期間は国によって異なりますが、日本やカナダ・ニュージーランド・中国などは著作者の死後50年となっています。
アメリカやイギリス、EUの各国では70年、メキシコでは100年となっています。 保護期間が過ぎた著作物は、パブリックドメイン(公有の財産)となり自由に利用することができます。
例えばゴッホは1890年没、モネは1926年没なので両者とも著作権フリーですが、ピカソは1973年没、ダリは1989年没ですから、両者ともまだ保護期間中です。ゴッホやモネの作品を複製(コピーを含め)したり公に展示したりするのは問題ありませんが、ピカソやダリの作品を複製や展示する場合は、現在の著作権者に承諾を得る必要があるということです。
しかし、問題になるのは原作品のみです。複製品として販売されているものを購入して店に飾るのは何も問題ありません。
パブリックドメインの作品でも注意点がある!
著作権が失効したパブリックドメインの絵画でも注意点があります。
例えば絵画を元に創ったパロディ作品やオマージュ作品などは二次的著作物(二次創作物)といい、これらは元になる作品があっても、単独の作品として扱われます。 著作権は、「思想や感情を創造的に表現したもの」に発生します。
二次的著作物も「思想や感情を創造的に表現したもの」に含まれるため、原作品と同じ著作権を持つことになります。
絵画を正面から写した複製写真の場合は、写真についての書作権は発生しません。被写体を忠実に写したものには、創作性がないため著作権が認められていないのです。
ネットから拾った絵画を店舗に飾る場合は、これらのことを考慮して著作権フリーとなったもので、元の絵画を忠実に写した画像から選ぶようにしましょう。
注意したいことは、もう一つあります。彫刻などの立体的な美術品を写真にした場合も二次的著作物となります。そこにはカメラアングルなど、作者の創意が表現されるもので著作権を持つものとなっています。
市販のポスターなどを拡大して店に飾るのは?
お気に入りのポスターがあるけれど、サイズが小さいため、大きく拡大印刷して店に飾りたいという人もいるでしょう。
これは違法でしょうか? 結論からいいますと、違法です。
ポスターは当然ながら著作権を持つもの。それを複製する場合は、二次著作物となり許可が必要になります。
しかしながら例外があり、自分で拡大・コピーして「私的利用」(店舗に飾る場合は微妙になる)する場合は著作権を問われることはありませんが、印刷業者などに依頼することはできません。
アニメや映画の世界観を反映した店にしたいが、著作権は?
好きなアニメや映画の世界感を反映した店づくりをしてみたいと考えているオーナー様も多いと思います。
しかし、1987年のミッキーマウス事件をご存じですか? 卒業記念として学校のプールの底に卒業生が描いたミッキーマウスの絵を、日本ウォルトディズニープロダクションが「著作権法違反」として、消させたというもの。
この事件から、ディズニーは特に著作権に厳しいと評判になりました。 アニメや映画のキャラクターの複製(自分でキャラクターに似せて描いた絵なども含む)や、ポスターのコピーは著作権を侵害する行為となりますが、正規で市販されているキャラクターグッズやポスターを店内に飾るのは問題ありません。
これは単に、オーナー様や店長の趣味の問題です。しかし、それを謳って店舗の宣伝をするのは、商用利用となり違法行為になります。大々的に宣伝したい場合は、やはり著作権者の許可が必要です。
近年、特に著作権が問題視されることが多くなっています。記憶に新しいのが、店舗のBGMの問題。CDを使ってBGMを流す場合は、著作権料としてJASRAC(日本音楽著作権協会)に支払わなければならなくなりました。
CDに限らず生演奏やカラオケでも同様です。店舗を経営されるオーナー様には、「世知辛い世の中になった…」とお感じの方も多いでしょう。 しかし、無用なトラブルを避けるためにも、著作権のルールを知っておくことは大切です。 特に著作権に関係するような、こだわりのある店づくりを望んでいる場合は、著作権関連の確認を怠らないようおすすめします。